【安保法施行?説明責任は一層重く?】

先月末、安全保障関連法が施行され、日本の安全保障政策は大きな転換点を迎えました。「集団的自衛権」の行使が可能になったほか、自衛隊の海外での活動の幅が拡がりました。

そもそも複雑な法律のうえに、新聞各紙の論調も「違憲の法制、正す論戦を」(朝日)、「自ら同盟の抑止力高めよ」(産経)、「安保法を生かす体制はこれからだ」(日経)などと大きく分かれ、この問題をどう理解すればよいのか分かりづらいと思います。参考になればと思い、自分なりに考えをまとめました。

●安全保障関連法とは

そもそも複雑で分かりづらいこの法律。
「平和安全法制整備法」という、今までの自衛隊法など10本をまとめて改正した法律と、
「国際平和支援法」という、自衛隊の海外派遣を随時可能にした新しい法律の2本からなります。

1本ずつ説明していくと長くなるので、主なポイントは以下のようになります。
▽『集団的自衛権』
日本の存立が脅かされる「存立危機事態」の際は、日本が直接攻撃をされていなくても「集団的自衛権」の行使が可能に。
▽『後方支援』
日本の平和に重大な影響を及ぼす事態の際は、日本周辺に限らなくても、アメリカ軍などへの後方支援が可能に。また、自衛隊の活動範囲の地理的制約を撤廃。
▽『国連平和維持活動(PKO)』
PKO活動に共に参加する他国の部隊や国連職員などが武装集団から危害を加えられそうなときは、自衛隊が武器を使って救援する「駆け付け警護」が可能に。
▽『国際平和協力』
国際紛争に対処する他国軍への支援は、そのつど法律を制定しなくても、国会の事前承認があれば随時可能に。

こうして見ると、これまでの考え方とは180度大きく変わったのは間違いありません。

日本を取り巻く安全保障は、▽北朝鮮が弾道ミサイル発射を強行し、▽中国も南シナ海など海洋進出を活発化させています。それを考えれば、政府の言う「紛争を防ぐ抑止力を高めることになる」という考えも分からないではありません。

●国民の理解が広がらないのはなぜ?

それでも、国民の理解がいまだに広がっていないことは事実です。なぜでしょう?

まず、これだけの政策転換なのに、いまだに丁寧な説明が行われていないことです。去年9月の法案成立のときだって、政府答弁には一貫性がなく、多くの憲法学者の“違憲”批判に対しても、まともに取り合いませんでした。極め付きは、衆院の特別委員会で、100時間の審議時間を超えたあとに行われた強行採決は「長時間付き合ってやったのだから、もういいだろう」という感じがありありでした。

そして、もう一つは、「抑止力を高める」という割には、相手に対してどのような行動を思いとどまらせようとしているのか、具体的な想定が出ていないことです。そもそも、この法律には、政治の裁量に幅を持たせようとしているため、どのような場合に「集団的自衛権」を行使するかなど、基準があいまいになっています。

このあいまいさは、抑止の観点からも逆効果だと思います。抑止効果を出すには、「この線を越えれば武力を行使する」という“線引き”が明らかになっていることが必要で、そうでないと、相手がこちらの意図を読み違える可能性だってあると思います。

●おおさか維新の会の立場は

では、「おおさか維新の会」の考えはどうでしょうか。維新の会は「集団的自衛権」の行使を一部認めることにしています。しかし、今のようにあいまいで、ときの内閣によっては、自衛隊の活動がどこまでも広がることには反対しています。

あくまでも自国防衛の考えに徹し、『集団的自衛権』の行使では、対象を、▽同盟国のアメリカや、▽条約を結ぶ国に限定すべきだとの考えです。そして、『後方支援』では、自衛隊の活動範囲を日本周辺に限るよう求めています。

今の法律よりも、具体的な想定も描きやすく、イメージしやすい、さらに憲法の範囲内だというわけです。これならば、国民の理解へ向けた議論は進むのではないかと思います。

●参院選をにらんで

法の施行によって、今後は、「部隊行動基準」や「作戦計画」などが策定されます。そして、アメリカ軍などとの共同訓練が行われ、その実績を踏まえて、自衛隊の部隊に対し、実際に任務が付与されることになります。

まず、最初は、南スーダンでPKO活動に参加している自衛隊の部隊に対し、「駆け付け警護」などの任務の付与が検討されています。その時期は、早くても11月以降になるとみられます。夏に参議院選挙が控えているため、政治的課題になるのを避けて、秋にしたのではないかと言われています。

●説明責任は一層重く

今も賛否が分かれている問題。それでも施行され、今後は法を適用できる事態に実際に遭遇していくことになります。その際、政府は、慎重な政治判断のもとに、自衛隊を活動させるかどうか決断していくことになります。それは、すなわち、政府の説明責任は一層重くなるということです。

政府は、今回の法施行を出発点に、国民的な合意形成に一層努める責任があると思います。